奪われた偽札の原版(仮)

その日、生姜町の一角にある、紺野 隆一の部屋をのぞき見ている人がいたら、「世界青色コンテスト」に向けて特訓する挑戦者のように、顔を青くしてぶるぶると震える、紺野の姿を見ただろう。
その日、生姜町の一角にある、紺野の部屋のそばで聞き耳を立てている人がいたら、世界中の文字を使っても決して言葉にすることは出来ない、奇妙な叫び声を聞いただろう。
その原因はつまり、紺野の宝物、偽札の原版が、部屋から失われていたからだった。
紺野はまるでスロットマシンのようにまばたきを繰り返す目で、現場に残された一枚のカードを読んだ。
「偽札の原版は預かった。――微笑みのジョージ」
紺野 隆一は耳から湯気を吹き出し、手にはホウキを持ち、目を白黒させ、足はがにまたになりながら、猛然と家から飛び出していた。
もちろん、微笑みのジョージから偽札の原版を奪い返すために。


紺野は三歩進んでは二歩下がりながらも進んで行った。
やがて、右側に石造りの塀がある道に出た。
道があるのに、わざわざ塀を越えることはないだろう。
紺野は塀ぞいの道を歩いて行った。
しばらく行くと、空中が目もくらむばかりに輝きだした。
ダダスダスダダス!
ダダスダスダダス!
閃光、そして白い煙があたりを覆う。
ダダスダスダダス!
光がやみ、煙がはれると、そこに、すっぱだかの白取がしゃがみこんでいた。
その様子は、映画「ターミネーチャー」で、未来のロボット、ターミネーチャーが、今の世界に現れるシーンにそっくりだった。ダダスダスダダス!
「もしかして、ターミネーチャー?俺を助けるために、未来からやってきたの?」と紺野は聞いた。


白取はゆっくり立ち上がって口を開いた。「そうだす」
「クールじゃん!実は、微笑みのジョージが偽札の原版をさ…」
紺野は事の経緯を白取に説明した。「…ということなんだ。微笑みのジョージのこと退治してくれるよね?」
「私は紺野 隆一を助けるようにプログラムされているだす」
「クール!じゃあ、一緒に行こう!」


紺野と白取は道を歩いていった。「ダダスダスダダス!」
白取はロボットとはいえ、外見は人間にそっくりだった。「ダダスダスダダス!」
しかし映画の通りならば、無敵の強さを持っているはずだ。「ダダスダスダダス!」
「ちょっと!」紺野は白取に言った。
「さっきからうるさい。もうダスダス言わなくていいから」
「分かっただす」
白取はシュンとした。
二人はてくてくと歩いていった。すると分かれ道に出た。


紺野たちは左に進んでいった。
しばらく行くと、サイレンの音が聞こえ、パトカーが近づいてきた。
「あやしい奴!堂々とすっぱだかで歩くんじゃない!わいせつ物陳列罪で逮捕する!」
そして白取はパトカーに乗せられて行ってしまった。
紺野は仕方なく一人で冒険を続けることにした。


紺野は肩で風を切って進んでいった。
やがて、道が二手に分かれる場所に出た。
右の道は蛇行しながら下っている。
左は下り勾配の道がまっすぐ続いている。


紺野は右の道を選んだ。
それからしばらくいった時だった。
「ウーララララ」
見ると、道沿いに置いてあるゴミ箱の中から、間宮 麗奈が顔を出していた。
「あーら、紺野 隆一さん!いや、あえて腐った魚さんと呼ばしてもらおうかしら!偽札の原版を少しでも早く取り戻したい気持ちは分かるけど、間宮 麗奈 様がここにいるってのに、黙って通り過ぎるなんて、どこに目を付けてるんだい?この夢遊病野郎!」
「いや気付かないでしょ、普通、そんなところにいたら」
「なぬ!」麗奈は紺野の前まで出てきて言った。「巷では『千島列島のファイナル・ウェポン』と呼ばれて恐れられている、このオーラ出まくりの間宮麗奈様に、気付かないのが当たり前ですって?」


「うん」と紺野はうなずいた。
「ならば死ね!」麗奈は額に血管を浮き上がらせて紺野に襲いかかってきた。
せいやっ!」紺野は麗奈にソニックブームを放った。「ぐはっ」ソニックブームは見事に決まった。麗奈は地面にばったりと倒れ、そのままさらさらと崩れて、最後には小麦粉になってしまった。
紺野隆一は間宮麗奈のお墓を作ってあげてから、先を急いだ。


紺野はトテトテと歩き続けた。
やがて、立て看板のある分かれ道に出た。立て看板にはこう書いてある。
『右に感動あり。左にスプラッターあり。』


紺野は右の道を選んだ。
しばらく行ったところで、「ハイ、カットォ!」突然大声が飛んできた。
「ちょっとちょっとー!あんた勝手に入ってこられちゃ困るんだよねー」
頭にバンダナを巻き、手にメガホンを持った木下がずかずかと近づいてきた。
「今さー、巷で話題の超人気番組『ハリガネボディ刑事カワマツ』のロケ中なのよ。観てる?観てない?じゃあイモ。観てないならイモ。…はうっ?」
木下が紺野の顔を穴があくほど凝視してきた。口がわなわなしている。
「……このどっちつかずの鼻の穴のサイズ…エキゾチックな瞳…意外性のある唇の色…ぴったりだ!この天才監督木下のイメージにぴったり!ラッキー、アーンド、そんな自分に乾杯!」


「いやー紺野隆一ちゃん。君は実に運がいい!実はね、この天才監督木下、次回作の主演をやれる役者を捜していたんだが、君がそのイメージにぴったりなんだ!おめでとう!もちろん、やってくれるよね!」
木下はにこやかに握手を求めてきた。


「よろしくお願いします、テヘッ♪」
紺野は両手で木下の手をしっかりと握り、かわいらしく笑った。
「アッハハハ、SO、イエス。次回作はね、『大盛りつゆだく、アーンドみそ汁』って言うんだけど、そこで君は冴えない窓際社員。だけど冴えないのは外見だけで、心はいつも戦国時代って感じで…」
木下の熱いトークはそれから1時間ほど続いた。
紺野は木下の名刺をもらい、ともかくこの冒険をさっさと終わらせるために、再び歩き出した。


「キーン」と言いながら、紺野は走って行った。
やがて、地面に深い亀裂の走った場所にぶちあたった。
裂け目の幅は2メートルほどで、助走を付けて飛べば、向こうに渡れないこともない。
しかし万が一足を踏み外せば、光も届かない奈落に落ち込んでしまうだろう。
すべては紺野隆一の気合い次第。どんなかけ声でジャンプしようか?


紺野は後ろに下がって助走を付け、「どりゃっ!」と言いながら踏み切った。
華麗なフォームで裂け目を飛び越し、向こうの地面に無事に着地した。
やがて、巨大な微笑みのジョージ城が見えてきた。
紺野はあたりを威圧するように建っている微笑みのジョージ城を見上げ、大声で微笑みのジョージを呼んだ。
「出て来い、微笑みのジョージ!偽札の原版を返せ!」
ゆっくりと城門が開き、赤いちゃんちゃんこを羽織った微笑みのジョージが姿を現した。
「良くぞここまで辿り着いた。さあ、好きな武器を選べ。おまえの望む死に方で、あの世へ送ってやろう」


紺野は金属バットを手に取った。
「ほほう、金属バットを使うか…おもしろい。さあ紺野隆一、かかって来るがいい!」
「オラァ!」
紺野は金属バットを振り上げると、微笑みのジョージをボカボカと殴りつけた。
「ま、待て待て!」
手加減せずに金属バットを振り回す紺野に、微笑みのジョージは心底恐怖した。
このままでは殺されてしまう。
微笑みのジョージは両手で頭を覆って、必死に命乞いをした。
「じゃあ、もう二度と偽札の原版に手出しをしないな?」
「もちろんだとも」
「よし」
紺野がバットを投げ捨てるのを見ると、微笑みのジョージは「ふん、このクレイジー野郎」と捨てぜりふを吐き、アリに変身して必死に逃げていった。


「うおーっ!」微笑みのジョージをうち倒した紺野は、天を仰いで勝利の咆哮をあげた。「偽札の原版ーッ!」はやる心に突き動かされた紺野は、両手をゾンビのように前に突き出し、猛然と城に突入した。
「偽札の原版ー!偽札の原版はねえかー!偽札の原版はおらんかー!」
城の中を歩き回りながら、ものすごい形相で叫び続ける紺野隆一の姿は、なまはげのようだった。
偽札の原版は、風の吹き込む、テラスのある部屋に、無造作に転がっていた。
「偽札の原版ーッ!」なまはげ、否、紺野隆一は、SGGK(スーパー・グレート・ゴール・キーパー)のように偽札の原版に飛びかかり、両手でがっちりとつかんだ。
「もう放さない!もう放さないぞ、俺の偽札の原版ッ!」
紺野隆一は偽札の原版に、いつまでもほおずりをし続けるのだった……。


昨日見た夢

「……正解! いよいよ次の問題で100万円、という事ですが、自信は?」
「愚問ですね、さっさと1000万持って帰りたいくらいですよ」
「すごい自信だ! ……では問題。次の漫画のうち、アメリカで実写版の映画が放映されるのはどれ?
A、北斗の拳  
B、ジョジョの奇妙な冒険
C、ドラゴンボール 
D、魁!男塾


「………っ!」
明らかに動揺を隠せない回答者斉藤。
「時間はたーっぷりあります。ライフラインも3つ残っている。」
そう話しているが、みのの表情は「さっさと答えろ」と言わんばかりの顔をしている。
答えは勿論Cだ、Cなのだが……。
「……ええと、Cです、ね。はい」
「ファイナルアンサー?」
ここでファイナルアンサーと言ってしまえばどんなに気が楽なのか。
次の問題に進み、当然おれはその問題も楽に答える事が出来るだろう。
が! ここでジョジョが出てきた以上! 触れん訳にはいかんだろうッ!
「…ふ…ぞ…ート……も…ほど…ヒー」
なにやら呟くおれ。
「……え!?」
「るえる…ハ…ト つきる…ど…ト」
「え? なんと?」
「震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート!!」
「え? え?」
「答えはC! だがおれは、あえてこう言おう! 映画になる期待と希望を込めてBと!」
「ファ……ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサーッ! そしてお前は『残念、正解はCのドラゴンボール』と言うッ!」
「…………………………残念ッ! 正解はCのドラゴンボール! はッ!」
バー( ´-`)ーン
「アリー・ヴェデルチ!(さよならだ!)」
感涙を流すみの。そして惜しみない拍手と湧く会場。
決して語られる事の無いミリオネアがそこにあったという……。

今日のテレビ


ちょwwww
えええええええ、これでおわり??
ま、 つらいことがあっても死んだらダメだよ!
生きていれば必ず未来に幸せが待っているよ!
ということが言いたかったんだと思います。
女王の教室がいかに志田未来の力で引っ張られていたかがよく分かった、ような気がする。

おれは夢を見ているのかな。
七色の風の、あまりに鮮やかな日々に。
果て無き空に、突き刺さる様な建物の影に。
二度と同じ波とは、出会えないという、果て無きロマンに。
そして、良いヤツほど早く死んでいくという現実に……

何故、絶命…!?

行きつけの接骨院の先生が交通事故で死んだ。
まだ若く、とても感じのいい人だった。
あの先生なら、こんな時代にあっても平和な生きかたができただろう。
彼自身もそれを望んでいたのだろうけど、それは達成されぬままに終わった。
一方で、平和を無為と感じ、それに耐える力を持たない者たちが生き残っているところを見れば、造物主は公平であるのかもしれない――悪意に満ちているという点においては。

面接行ってきた

一次面接。
経理なんて未経験のおれが、経理の職に就こうなんて、莫迦げている。
「緊張しなくていいからね」
面接官は言ったが、ハナから受かる気なんてないのだ。
わざわざ経理・簿記の本まで買って持っていき、「独学で勉強してます」なんて。
ちょっとした演出はウケたようだ。
ちなみに、ヤクルト関連の会社である。
「ヤクルトに対して、どういったイメージをお持ちですか?」
「ヤクルトには乳酸菌が含まれていますよね。とってもヘルシーで美味しい、美味しい、美味しいシィ〜♪なイメージで好きです」
などと大ボケをかますおれはどうかしている。
この面接をクリアすれば、社長面接だ。
…ああ、最後に
「私は御社の筆頭株主です」
とか言っておけばよかったかなあ……